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3,4期 株田君

ロンドン大学経済学部 合格!

The University of London

The London School of Economics and Political Science (LSE)

BSc Management

 2月の内定通知から5ヶ月。6月の最終試験から1カ月半。ロンドン大学入学が現実味を帯びてからも、これだけの時間が今日の本発表に至るまでに経過した。
 ―そして、ついに‘合格’― 喜びの気持ちと共に、留学中の楽しかったこと、つらかったことすべての出来事が思い出され、その間の努力は私を裏切らなかったということを確認してくれる。英有力紙Timesによる世界大学ランキングでは社会科学分野で2位だという。どうやら寝食を忘れて研究に邁進できる環境と言えそうだ。そうした環境に身をおくことでこの先さらに自分は成長できるのではないかと思う。
 しかし何にもまして重要なのは、浦高やホイットギフト校の先生方・友人、家族など、今までお世話になった人々の応援がなければ、自分はここまでたどり着けなかったであろうということ。温かなご指導・ご支援は、挫けそうになったときを含めいつも私に留学当初の目標を思い出させてくれた。この場を借りてそうした全ての方々へ厚くお礼を申し上げておきたい。



株田君報告書.pdf (PDFが開きます)
 

~長期留学制度という浦高の‘魅力’~


 第3・4期浦和高校英国姉妹校長期派遣生 株田靖大

 去る7月1日、2年間を過ごした英国パブリックスクール・ホイットギフト校(以下ホ校)を卒業した。「派遣生」という肩書きで来たのは事実だが、一般の生徒と同じように勉強し、クラブ活動に参加し、そして英国大学進学の道を切り開いてきたのだと思うと、とても誇らしい気持ちになる。数えられないほどの楽しい思い出と共に、異文化・異言語のなかでここまで来たという充実感・達成感、そしてホ校が提供する質の高い教育によって得たロンドン大学への足がかり、この2年間の収穫はどれを振り返っても留学前の私の想像をはるかに凌駕する中身の濃いものだったと言えそうだ。

 そんな訳で今回のレポートでは、「浦高進学を考えている中学生」に標準を絞り、進学の是非を検討する際にこの留学制度は‘浦高の魅力’としてどれほど考慮に値するか(もしくはしないか)、そういったことを論じたいと思う。
 一番最初に触れておくべき長期交換留学制度の特質は、おそらく、年間260万円相当もの授業料・寮滞在費が、毎年1人の浦高生には免除されるという点であろう。県立高校としては、また日本全国見回したとしても、これだけ好条件の留学制度を独自に持っている高校はまず浦高くらいではないか。あとにも触れるが、相手校の質の高いパブリックスクール教育を考えればなおさらである。
 浦高とホ校間の協定を見てみると、毎年新三年生の希望者の中から1人に上記の奨学金が与えられる、とある。一般的に言って、留学を希望するものにとってその経済的負担とは悩みの種であることが多いのだが、その点留学に要する全ての経費を学校側が責任を持つというこの留学プログラムは、現地での安定した生活を保証するという意味において、高く評価されるべきであろう。

 次に、これは寮滞在費免除という点に関わってくるのだが、浦高からの留学生は滞在する寮で東欧の学生らと共同生活を営むことになる、というのがある。というのも、旧ソ連圏の発展途上国から優秀な学生を毎年5人程度受け入れ、彼らの英国大学進学を援助するという活動を、ホ校は上述の奨学金制度を通してここ 10年程既に行ってきているのだ。そういった事情から、浦高からの派遣奨学生もそれらの東ヨーロッパ出身の学生らと共に寮生活をすることになる。

 例えば昨年の私はチェコ、モルドバ、クロアチア、ブルガリアそしてハンガリーからの学生と共に生活をした。当たり前ではあるが、言ってみれば寮のなかでは皆が‘外国人’なわけで、皆が良い意味で競い合いながら、そしてまた不必要な羞恥心に苛まれることもなく、互いの英会話力を磨き合える。またなによりも、食事も一緒、洗濯も共同、学期中に計画される寮主催の旅行を通してなど、とにかく‘留学’という期間の中で彼らと共に過ごす時間が長いのだ。そうした中で自然とはぐくまれる友情・繰り返される彼らとの熱い議論は、留学中私の中のフロンティアを幾度となく開拓してくれた。
 彼らはさすがに各々の国を代表するエリートであり、日本のことを紹介する際もきまって鋭い質問を私に浴びせかけてきたものだ。そうしているうちに私が学んだのは、なにも論理的な話法で相手を説得する卓越したプレゼンテーション技術だけではない。それよりも、自分は日本の何を知っているのか(i.e.知らないのか)、自分はなぜそれらを伝えたいのか、自分はこれから何を経験したいのか・学びたいのか、そうした自分に対する無数の質問である。自らのアイデンティティを再確認する作業とでも言えばいいのだろうか。
 こうした一種の‘試練’を乗り越えながらの精神的成長は、そこで身につく英語力と同等に、もしくはそれ以上に、10代のこの時期から得る価値は十分にあると言えるだろう。ましてグローバル化が叫ばれる21世紀である。貴重な国際感覚と確かな英語力、両者はこの留学プログラムの特筆すべき点と言えそうだ。文武両道をめざして浦高入学を希望する中学生諸君にとって、バランスの取れた人格形成に大いに寄与するであろうこの留学制度は、大変に魅力的なものであるだろう。

校庭の片隅にある寮 
1階には6人の学生が、上階には寮監の先生夫妻が住む
湖水地方へ旅行した際に寮の仲間と
(左から3人目が筆者)

 そして、最後に、しかし一番強調しておきたいのは、ホイットギフト校が伝統的な英国パブリックスクールの1つである、という点である。そもそも英国においてパブリックスクールとは公立高校を意味しない。完全な私学であり、それも1600年前後に貴族子弟のために作られた‘エリート養成機関’という意味合いが強い。現在でも政・財・学界で活躍している人々の中にはパブリックスクール出身者が際立って多い。そうしたパブリックスクールの中でも特に上位校であるホイットギフトは、その伝統と豊富な資金力を背景に非常に質の高い教育を提供しているのだ。オックスフォード、ケンブリッジ、ロンドン大学など、世界的にも著名な大学へ多数の生徒を送り出していることをとっても、この点はうなずけるだろう。

 例えばホ校では、少人数教育(1クラス生徒平均7~8名)により教師は一人一人の生徒に確かな注意を払え、それだけ授業中の指導は密度の濃いものとなる。またこうした規模の小さいクラスでは、徹底した小論文(essay:エッセイ)指導が可能となるのである。確かに、昨今の日本の入試事情を鑑みても、選考の際に小論文作成を課す大学が増えてきたという感じはする。しかし、高校教育の段階でエッセイ指導にこれだけの労力を注ぎこむ英国の姿勢は、あきらかに日本の教育のそれと違うように私には思われるのだ。それは偏に、生徒の‘論理力’の養成を高校教育の最重要課題と見なすが故であろう。「必要な情報を探し出し、それを加工・分析して、求められる形で表現する」という一連の作業が良い小論文を書くには必要不可欠であることは言うまでもない。しかし、授業の中で幾度となく繰り返されるこの種の作業によって、生徒は卒業までに確かな論理力と自らの意見を発信する術を完璧なまでにまさに‘学ぶ’のだ。
 ちなみに、ロシア革命に関する3千語程度のエッセイを3週に1度のペースで私はこれまで課されてきたが、そこで培われたエッセイの書き方、物事の論理的分析方法、その他英語長文書き方のコツなどは、全てこの9月から始まるロンドン大学での研究生活を土台として支えてくれるだろうと信じている。

 と、ここまでこの長期交換留学制度の利点について詳細に説明してきた。実際に私は、ホ校や英国大学の教育システムに大変魅了され、イギリスの大学進学を決意するに至った。しかし、である。そんな私でもすべての人にホイットギフト校留学を薦めようとはまったく思わない。先にも述べた経済的負担の大きさもさることながら、留学を成功させたいと思うのならばやはりそれ相応の覚悟と忍耐が必要になってくる。また、日本の大学に浦高後の進路としてより大きな魅力を感じるならば、それはそれで良いのだと思う。詰まるところ、海外留学の価値など人によって違うであろうし、またその人の努力次第で収穫の程度も変わってくるということだ。数多くの利点があるのと同じように、やはり考慮すべきマイナス面も海外留学にはあると言えるのかもしれない。

 ただそんな中でも私が思うのは、本制度がある意味で非常に浦高らしいプログラムであるという点である。つまり、「あなたのためにすばらしい教育環境は用意する。しかしそれを利用するもしないもあとは生徒のあなた次第」とでも言うべき、生徒1人1人の自主性を重視した姿勢。数多くある学校行事や熱心な教師を見てもわかるように、浦和高校という学校はこうした理念を一貫して持っているように私には思われる。

 だからこそ、海外留学に少しでも興味があり、また今後様々な経験をして自分を高めたいと考えている中学生諸君には、ぜひ浦和高校進学を検討してもらえたらと思う。この留学プログラムはそんな期待に十分に応えうる、充実した内容を誇っているのだから。

2005年7月

ホイットギフト校正門前で